東京地方裁判所 昭和43年(ワ)13401号 判決
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〔判決理由〕
四 (原告会社の損害)
(一) 物損
破損した自動車が修理可能の場合には、修理費および価格の減少ならびに修理期間中の代車使用料を賠償すれば足りるのであるが、修理不能の場合には、事故当時の価額相当額からスクラップとしての価額を控除した額を賠償すべきである。
ところで、<証拠>によれば、本件被害車はスクラップとして売却され、修理不能であつたことが認められる。そこで、事故直前における被害車の価額について判断する。原告は減価償却額を定率法により算出して評価すべきであると主張するが、減価償却額を定率法あるいは定額法により算出する方法は、税務処理上又は会計事務処理上固定資産を評価する方法として採用されているものであつて、自動車事故の損害賠償請求事件においては、他に価額を認定する資料がない場合においては定額法あるいは定率法によつて減価償却をして評価することが妥当であるが、端的に価額を認定するに足りる資料が存する場合にはこれによつて評価するのが妥当である。
鑑定嘱託の結果によれば、被害車と同種の車輛で同期間使用された車輛は、東京都においては本件事故のあつた昭和四三年五月当時、購入価額は二〇万二〇〇〇円、売却価額は一六万九〇〇〇円であることが認められる。そして、損害賠償額の算定に際しては、流動資産あるいは清算を前提とする場合の固定資産については売却価額によつて評価するのが妥当であるが、営業を前提として固定資産を評価する場合には購入価額によつて、損害賠償額を算定するのが妥当である。<証拠>によれば、被害車は原告会社の営業用の車輛であることが認められるので、右の同種中古車の購入価額を以て事故当時の価額と評価すべきである。なお、被害車はスクラップとして一万円で売却されたことは当事者間に争いがないので右一万円は損益相殺されるべきである。
したがつて、被告らが車輛破損の損害として賠償すべき金額は二〇万二〇〇〇円から一万円を控除した一九万二〇〇〇円である。
(二) 営業損
<証拠>によれば、原告会社は昭和四〇年一一月二二日に設立された資本金五〇万円の会社で、厨房器具の工事、販売を業とし、事故当時は従業員五名で、実質的には原告小山の個人会社であることが認められる。
かかる個人会社の代表取締役が事故に遭遇し死傷の結果会社に損害が発生した場合には、事故と相当因果関係のある損害については賠償を認めるべきである。
原告は、売上額の減少に荒利益率を乗じた額を以て、損害額であると主張するが、かかる金額は荒利益の減少額であつて、これを以て逸失利益の額とすることはできない。けだし、損害賠償の対象になるのは、荒利益の減少額ではなく、荒利益から諸経費等を控除した純利益の減少に相当する損害であるからである。
<証拠>によれば、昭和四一年一〇月一日から昭和四二年九月三〇日までの一ケ年間の原告会社の利益金が一万三五〇〇円であるのに対し、昭和四二年一〇月一日から昭和四三年九月三〇日までの一ケ年間については利益金はなく損失金が一八六万七七六〇円であるが、損失の大きな原因は、得意先の倒産による貸倒金が二九二万円余りあることによるものと認められ、得意先の倒産という本件交通事故とは関係のない事情によつて損失が発生しているのであつて、かかる倒産がなければ、前年度より多くの利益を収めたであろうことが推認される。
したがつて、利益金の比較によれば、原告会社の損失が認められるが、これを以て本件交通事故と相当因果のある損害と認めることはできない。本件全証拠によつても、本件事故と相当因果関係のある原告会社の損害は認められない。(篠田省二)